労働者が事業所外で業務を遂行する場合、その労働時間を事業場の管理監督者が把握することは極めて困難です。一方で、管理監督者は労働者の始終業時刻を正しく把握し、賃金はもとより所定の労働時間を超えて業務を行った残業代については、決められた割増率をもって支払わなければなりません。例えば、携帯電話などを使用して、逐一、管理監督者が労働者に対して指示を与えていくこととできれば、正確に労働時間を把握することも可能ですが、あまり現実的ではありません。そこで、定められたのが「みなし労働制」であり、外回りの営業職など事業所外で業務を遂行する職種に特化したものが「事業場外みなし労働時間制」です。
事業場外みなし労働時間制は、単に事業場外で働いているだけでは認定されません。あくまでも管理監督者が所定の労働時間を把握できない状況であることが条件となります。また、これに伴う残業代については、日常的に勤務時間を越えることが予想できる際は、あらかじめその労働時間を過半数組合もしくは社員代表と整理しておく必要があります。もちろん、予期せぬ事態により所定の労働時間を超えた場合は残業代が支払われることとなります。
営業職が活発になることで、事業場外みなし労働時間制度適用される事業場が増えてくると思いますが、みなし労働時間制だからといって、自己の労働時間管理をしなくても良いと言うものではありません。むしろ自己責任においてしっかりと管理し、やむを得ず所定のみなし労働時間を超えてしまったものについては、残業代を申告すべきです。